Eテレ考察ブログ

Eテレで放映中の番組(主に100分de名著・ねほりんぱほりん)の内容考察をします。たまに、単発でテーマ自由な考察もします。 Twitter→ https://twitter.com/Sweets1942

【第1回後半】 仮想通貨の分散性・世界通貨性 -バブル後価値をもつには- 

f:id:wordmindblack:20171230152150j:plain

この記事は 第1回 前半の続きものになっています。

【第1回後半】 概要

 本記事2.1.では仮想通貨の現状を確認していく。2.2.では仮想通貨の特徴について述べる。

定義:仮想通貨 法定通貨による公式な根拠づけを持たない電子マネー

仮想通貨 - Wikipedia

2.1.仮想通貨の現状 -ビットコインを例に-

定義:通貨価格 通貨の価格もしくは時価総額

  ビットコインの通貨価値(適正時価総額) =     1,826億円

  ビットコインの通貨価格(時価総額)   = 286,926億円

  通貨価格 = 通貨価値 + 投機

なぜ通貨価値から通貨価格が大きく剥離するか? → 過剰な投機 = バブル(バブル崩壊の危険)

 

2.2.仮想通貨特有の価値とは? -既存通貨との差異と特有の価値・課題-

差異1)中央機関をなくすことが出来る

定義:分散型仮想通貨 中央機関が存在しない仮想通貨 例)ビットコインイーサリアム・ヴァージ

  特有の課題1.1)金融政策が不能 = 景気対策不能・通貨の慢性的不安定

  特有の価値1)通貨競争を予防

定義:集権型仮想通貨 中央機関が存在する仮想通貨 例)リップル(XRP)

  特有の課題1.2)金融政策が可能だが、中央銀行並みの実力があるか?

 

差異2)世界通貨である

定義:世界通貨 世界中で通用する通貨

  特有の価値2)為替コストの低減

  特有の課題2)各国に合わせた金融政策が困難になる

 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 2.仮想通貨の現在と未来

 (執筆時, 2018/01/01)、仮想通貨は熱狂の中にいる。これは真の熱狂なのか?それとも偽りなのか?これは真の革新なのか?それとも扇動なのか?これは真の通貨なのか?それとも虚像なのか?2.1.では仮想通貨の価値が妥当か検証する。そして2.2.では仮想通貨と既存通貨の差異について述べる。そしてこの差異を分析し、仮想通貨特有の価値および課題について論じていく。

f:id:wordmindblack:20180103142606j:plain

2.1.仮想通貨に価値はあるのか? -仮想通貨の現在-


れは真の革新なのか?それとも扇動なのか?


 仮想通貨の値上がりは驚異的だ。ビットコインは0.09円から200万円におよそ3000万倍の値上がり、リップル(XRP)は0.61円から300円へ500倍である。これは何故か?本当に価値があるゆえなのだろうか?

【12月27日最新版】3分でわかるリップルの歴史 - MoneyToday

 

 本題に入る前にまず、仮想通貨とは何か?を定義する。既存通貨は法定通貨そのものであるか、何等かの形(先払いまたは後払い)で関係づけられていた(詳しくは第1回 前半を参照)。ゆえに仮想通貨とは、法定通貨による根拠づけを持たないことが特徴の一つである。また、「仮想」という言葉が象徴するように電子的である。ゆえに以下のように定義する。

定義:仮想通貨 法定通貨による公式な根拠づけを持たない電子マネー

仮想通貨 - Wikipedia

 この節では仮想通貨の通貨価値と通貨価格を推定し、仮想通貨に価値はあるのか?という問いに答えていく。代表的な仮想通貨としてここではビットコインに対し分析を行う。これは他の仮想通貨はモノ・サービスと交換することはほぼ不可能であり、通貨価値を持たないからである。

2.1.1.ビットコインと日本円の通貨価値比

 仮想通貨は通貨価値を持っているのだろうか?ここではその推定をしていく。通貨価値は交換可能価値と貯蔵可能価値から成る。そこで交換可能価値の比をビットコイン日本円に対して推定する。そのために、交換可能価値=通貨価値と仮定して、比を推定する(本来は貯蔵可能価値も推定するべきであるが、簡単のため本記事では交換可能価値のみ推定を行う)。

 まず考慮しなければならないのは、仮想通貨による取引の大部分を投機目的による取引が占めることである。

定義:投機  相場の変動によって生ずる差額を利得するために行う売買取引

投機取引(トウキトリヒキ)とは - コトバンクより引用

 交換可能価値は投機目的の取引は含んではならない。なぜなら投機はモノ・サービスへの交換ではないからだ。ゆえに投機目的の取引は除いて(つまり、商業目的の取引のみ考えて)推定する必要がある。

1)ビットコイン

 まずビットコインだが、取引額のうち大半が投機によるものだと言われている。それはどのくらいの割合だろうか?推定は難しいが、今回は取引額の99.838%が投機目的と推定した(推定方法は別記事に記載する)。

 ここでは通貨価値比の推定過程を簡単に述べる。まず、2017年12月における1日当たりの取引額は¥424,156,258,354=約4,242億円である。ゆえに1日当たりの投機目的を除いた取引額は

¥424,156,258,354×(1-0.99838)=¥686,878,223.63=約6.9億円である。

Estimated USD Transaction Value - Blockchain 取引額引用

2)日本円

  では、日本円の1日当たり取引額はいくらだろうか?ここでは総産出額 (Gross Output) を元に推定する。総産出額とは国内でどのくらいモノ・サービスが取引されたかを意味する(この詳細も別記事に記載する)。これを元に推定すると1日当たり取引額は¥2,731,306,010,928.96≒約27,313億円である。

Gross output - Wikipedia

 

ビットコインと日本円 通貨価値比

 ビットコインと日本円の通貨価値比≒交換可能価値の比=1日当たり取引額の比は 

ビットコインの通貨価値:日本円の通貨価値=約6.9億円:約27,313億円 となる。

つまりビットコインの通貨価値は日本円の約1/4000である。

2.1.2.ビットコインのバブル 価格と価値の剥離

 ここではビットコインの通貨価格が適正かどうかを論じていく。このために通貨価格(≠通貨価値ということに注意)をまず定義する。

定義:通貨価格 通貨の価格もしくは時価総額

 仮想通貨では、通貨価格は時価総額と呼ばれることが多い。この通貨価格は通貨価値と投機によって決まる(第2回で詳述予定)。

通貨価格の決定 通貨価格は通貨価値と投機によって決定

 本当に価値のあるものは価格も大きくなることは想像できるであろう。また、価値が少なくても価格が上がることがある。例を挙げると、ほとんどの仮想通貨は実際に通貨価値を持っていない(モノ・サービスと直接交換できない。ビットコインを媒介しなければならないはずだ)。しかし、通貨価格は上がっている。これは人々が値上がりを期待して資金を投入しているためであり、投機による上昇である。

ビットコインの通貨価値

 ではここからビットコイン自体の通貨価値を推定する。

 そのためにまず日本円の通貨価値を推定する。ここでは日本円は非常に安定した通貨と考える。つまり投機による通貨価格の変動は無視できるとする。すると通貨価値=通貨価格と考えることが出来る。

 日本円の通貨価格は現在流通している日本円の量全体(マネーストック M1)である。これは12月時点で 約7,260,000億円であり、これが日本円の通貨価格=通貨価値である。ビットコインの通貨価値は日本円の約1/4000であるから、

ビットコインの通貨価値=7,260,000億円×1/4000≒約1,820億円 となる。

「マネーストック」とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan

 

 1,820億円ビットコインの通貨価格時価総額28,692億円と比べると約1/160である。つまり通貨価値と通貨価格の差がとても大きい。なぜこのようなことが起こるのだろうか?

 Bitcoin (BTC) Historical Data | CoinMarketCap ビットコインの通貨価格(時価総額)引用

 

 そう、この差額は投機によるものだ。価値と価格が大きく剥離した状態をバブル経済といい、これには暴落の危険性がある。なぜなら、バブル経済は人々の投機によって支えられている。何らかのきっかけで価格が下落すると、それを見た人々は損を回避するため次々と資金を引き揚げる。そしてさらに価格が下落する、を繰り返す。こうして急速な価格の下落を起こす。これをバブル崩壊と呼ぶ。

バブル経済(ばぶるけいざい)とは - コトバンク

バブル崩壊(バブルホウカイ)とは - コトバンク

f:id:wordmindblack:20180103142733j:plain

2.2.仮想通貨特有の価値とは? -既存通貨との差異と特有の価値・課題-


想通貨の歴史は始まったばかりである


 2.1ではビットコインを例に挙げ通貨価値と通貨価格が大きく剥離しており、バブルである、と述べた。では、仮想通貨は単なる一過性のものであり、バブル崩壊後は何の意味も持たないのだろうか?そうではない。仮想通貨は既存通貨と比較して大きな二つの差異がある。差異は特有の価値と課題を生み出す。価値を最大化し、課題を最小化した仮想通貨がより価値ある仮想通貨になるだろう。

差異1.中央機関をなくすことが出来る

 既存通貨では中央銀行もしくは中央集権的な通貨管理機関(中央機関と略す)が通貨を管理していた。仮想通貨ではどうだろうか?ほとんどの仮想通貨では中央機関は存在しない。このような仮想通貨を分散型仮想通貨と呼ぶ。これはブロックチェーン技術によって可能になった。

定義:分散型仮想通貨 中央機関が存在しない仮想通貨

 分散型仮想通貨に当たるのは、ビットコインイーサリアム・ヴァージなどだ。

ビットコイン - Wikipedia

イーサリアム - Wikipedia

ヴァージ - Wikipedia

 では、中央機関が存在しないと、どのようなことが起こるだろうか?結論から言えば、金融政策があらゆる意味で実行不能となる。それは以下のような仮想通貨特有の課題・価値を生み出すことを意味する。

特有の課題1.1)景気の波が激しくなる・通貨の慢性的不安定

特有の価値1)   通貨競争を予防

 金融政策は通貨安定化、景気対策という二つの側面があることは第1回 前半で述べた。これが不可能になるわけだ。まず、通貨安定化ができない。ゆえに慢性的な不安定性を抱えることになる。これは貯蔵可能価値に大きな打撃を与える。値動きが激しい通貨は将来に渡って貯蔵し辛いからだ。

 次に景気対策が出来ない。これは景気の波が大きくなることを意味し、好景気の時と不景気の時の差が激しくなる。これらが特有の課題1.1である。

 しかし、見方を変えれば昨今の通貨安競争も出来なくなることを意味する。これは特有の価値1である。

 分散型でない仮想通貨も存在する。集権型仮想通貨とは、中央機関が存在するような仮想通貨だ。リップル(XRP)がこれに該当する。

Ripple (支払いシステム) - Wikipedia

定義:集権型仮想通貨 中央機関が存在する仮想通貨

 このような通貨は既存通貨と同じく、金融政策が原理的には可能である。 しかし、中央銀行と同じくらい効果的な金融政策が行えるのか、は大きな課題が残る。結局このような仮想通貨は中央機関の性能に大きく左右される。

特有の課題1.2)金融政策が可能だが、中央銀行並みの実力があるか?

差異2.世界通貨である

 既存通貨と大きく異なる部分二つ目は、仮想通貨は世界中で通用する世界通貨である、ということだ。

定義:世界通貨 世界中で通用する通貨

 世界通貨であることと、交換可能価値の大きいことを混同してはならない。例を示すと今の仮想通貨(特にビットコインを想定)は世界通貨であるが、交換可能価値は低い。つまり、国・地域関係なく利用は可能であるが、利用できる店の数は少ない(アメリカでは楽天、日本ではビックカメラ一部店舗など)。

ビットコイン - Wikipedia

 世界通貨である、ということはどのような特徴を持つのだろうか?ユーロの例を参照してみる。ユーロはヨーロッパで用いることが出来る統一通貨だ。これを導入したときどのようなことが起こっただろうか?それを通して世界通貨である、という差異から生じる特有の価値・課題を見ていく。

特有の価値2)為替コストの低減

特有の課題2)各国に合わせた金融政策が困難になる

ユーロ(ゆーろ)とは - コトバンク

ユーロ - Wikipedia

 まず特有の価値についてだが、直接的には為替コストがなくなる。ここでいう為替コストとは①両替のコスト ②為替リスクのコスト=為替が変動することへの備えのためのコストである。

 まず両替のコストだが、両替するためには為替レートに上乗せで両替コストが一般にかかる。例をあげよう。1$-120円のとき、ドルと交換するため両替所で12,000円を支払ったとしよう。この場合、100$を受け取ることはできない。なぜなら交換のための手数料(両替コスト)がかかるからだ(両替所はこの手数料で利益を上げている)。これが両替のコストである。

 次は為替リスクのコストである。

為替リスク(かわせリスク)とは - コトバンクから引用

 いま為替相場が輸出契約成立時点では1ドル=110円であったのが、代金回収時点では1ドル=105円になったとすると、1ドルにつき5円の為替差損が発生することになる。このような為替リスクを回避するために、貿易業者は一般に契約が成立するとただちに外国為替を取り扱う銀行に為替予約(先物(さきもの)為替取引)をする。

 上記先物為替取引へのコスト、それが為替リスクのコストである。統一通貨はこれら二つの問題を回避でき為替コストを低減する。

 特有の課題としては自国の通貨でないため、自国独自の金融政策(特に景気対策)が不可能になる。例を挙げよう。同じ通貨を使用する不景気なA国と好景気なB国があったとする。A国は景気対策として通貨を増やしたく(インフレーションへ誘導)、B国は通貨を減らしたい(デフレーションへ誘導)。この利益相反によって各国は思うように行動できなくなる。

 仮想通貨が本当に価値を持つためには、既存通貨との差異を生かす必要がある。すなわち、価値を生かし課題の悪影響を少なくし、既存通貨への優位点を作らなければならない。

 

2.3.まとめ

  前後半で述べた内容をここでまとめる。

・通貨価値=交換可能価値+貯蔵可能価値

・通貨価格=通貨価値+投機

 通貨価値とは、通貨の機能がどのくらい強いかを示している。通貨価格は価値と投機によって決まる

ビットコインの通貨価値=約1,820億円

ビットコインの通貨価格=約28,692億円

 ビットコインの通貨価値はまだまだ低い。しかしそれを大幅に上回る通貨価格が付けられている。これはバブルである。

バブル = 価値と価格の剥離 =過剰な投機

 既存通貨との差異および特有の価値・課題として以下が挙げられる。

1.1.分散型仮想通貨(中央機関なし=金融政策不可)

  特有の課題1.1)金融政策が不能 = 景気対策不能・通貨の慢性的不安定

  特有の価値1)通貨競争を予防

1.2.集権型仮想通貨(中央機関あり=金融政策可能)

  特有の課題1.2)金融政策が可能だが、中央銀行並みの実力があるか?

2.世界通貨

  特有の価値2)為替コストの低減

  特有の課題2)各国に合わせた金融政策が困難になる

 まず共通することは、金融政策が困難になることだ。これは通貨不安定や景気対策が後手に回る可能性を示唆している。しかし、為替コストがなくなることが期待される。価値を伸ば課題の悪影響を減らすことが仮想通貨が本当の通貨になるために非常に重要だ。

 

 次回は通貨価値・通貨価格についてより詳しく述べる。

 なぜ既存通貨は大きな交換可能価値・貯蔵可能価値を持つのだろうか?通貨価値にとって投機はどのような存在であろうか?また仮想通貨は大きな通貨価値を達成するだろうか?

 仮想通貨の通貨価格を大きく押し上げる投機はなぜこんなにも為されるのか?その性質とは何か?仮想通貨を本当の通貨たらしめるには有用か?不要か?

 以上の論点を明らかにしていく予定である。

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 ここまで読んでいただきありがとうございました。もしお気に召しましたら、はてなブックマークコメント感想など頂ければとても嬉しいです。

ありがとうございました!次回もぜひよろしくお願いします。